• Naoki.

急展開が見せた景色。

深夜

土砂降りの雨が足早に過ぎて行った。



『すごい雨ね。。』


君からの吹き出しに


『こっちはもうやんだよーそっちは降ってるんだ?』


何も考えずに返した。



するとしばらくして


『ほんとだ。。』と

返ってきた。


文字は

何か言いたさげにしていて

だけど

あえて僕からは何も聞かず

ただ

笑った。



直後

文字のやり取りを破るかの勢いで

電話が鳴った。

時計は一時。

こんな時間に電話をかけてくる君ではないのに

どうしたんだと

不思議に思いながら

パソコンに向かっていた手を止めて

出てみた。



『どうした?』


『実はね。。』


『うん。。?』


『来ちゃった。。』


『ん?何が来たの?』


『あー。。ごめん。。』


『え?なになに?』


『近くまで来ちゃった。。』


『。。は?』


『でもね、大丈夫、ホテルとったから。。』


『いーーやちょっと意味分かんない。。』


『急に来ちゃったし、このまま帰るよ』


『じゃなんで電話したんだよ。。』


『ごめん。。』


『えーーー?なになになにごと?。。


んーーーー。。

明日午前中ちょっと忙しいんだよ。。

午後をなんとかするからちょっと待っててじゃあ。。』


『仕事の邪魔したくはないの。。』


『いやだから

じゃあなんで来たんだし。。

まあ。。いいから待ってろ』


『はい。。ごめんなさい。。』



突然の電話で

目の前にあったスケジュールが大きく変わった。

というか

狂った。


晴れていたのに

突然土砂降りの雨が降ってきたからどこかへ入らないといけない

そんな状況に近かった。





次の日は晴天で

急遽予約したホテルに向かう電車の中

パソコンを開いて仕事しながら

君のことはほとんど頭になくて

最寄りの駅に着く手前でやっと


『そろそろつく』と

短く送った。



ホテルのエントランス

君が両手を揃えて立っていて

僕が近づくと

申し訳なさそうな顔をした。



『行こう』

止まらず進む僕の声に

君は小走りで先立って鍵を開けていく。



開いた部屋の扉を入って

真っ先に海が見える景色に向かい

腰掛けたら

君が珈琲を持ってきてくれた。


『ありがとう』

君を見て

もう一度海を見る。



『悪くないか

こうやって無理やり時間空けるのも

結局

すーごい落ち着くな』


君が僕を向いて座るから


『君のおかげだね』

と伝えて笑って

『隣に来れば?』と言ったら

君も笑ってぐっと近づいた。



海を眺めながら

どうでもいいことばかりを話した。

覚えているのは

『こうやって

言ったそばから何喋ったか忘れちゃうような

どうでもいいことを話してるこの時間がいい』って

言ったことだけ。



結局ものすごく心地いい時間の中で

海が

風が

静かに

気付かないほど優しく

僕の中を満たしていった。




君を連れて散歩道を通る。

記憶に残らない会話が

僕の頭をどんどん空っぽにしていく。


とめどなく話して

随分時間かけてゆったり歩いて


部屋に戻った僕は

君の隣で

ものすごい深い眠りについた。




翌日

いつも通り湾岸沿いで迎える朝なのに

前日までとは明らかに違った。


変わらず

朝の海を眺め

グラスに入れた水を飲み

深く呼吸する。

いつも通りのはずなのに

僕の目には

世界が

今まで以上に

煌めいて見えた。



『幸せだ。。』


ついこぼれた言葉には

希望しかなかった。


Naoki.


P.S.声ブログも更新しました。Spoon:@naokimulakami