• Naoki.

待つこと。

振動。


22時。


久々

君からで。



出ても君は無言


相変わらずだ。




『どうしたの?』


『。。。あの。。』




かけてきたのはそっちなのに


うんともすんとも言わない。


また勢いでかけてきたんだろう。




『焼肉食べ行かない?』


『え。。?』


『嫌ならいいけど。笑』


『嫌じゃないです!行きます。。』




こっちからテキトーに話すと


君は

やっと言葉を口にする。




全然他愛ない


話したそばから忘れていきそうな


そんな話をして


君はひたすら聞きながらちょいちょい笑って


とりとめのない時間。




しばらくして


僕は時計を見る。


「そろそろ寝ようかな」

そう思って

君に伝えた。







『あの。。』


『ん?』


『会いたいです』


『それ言いたくて電話したの?』


『そうだと思います』


『そうか。笑

焼肉食べ行こうって。笑』


『はい。笑』


『次の休みは?』


『それがまだ。。』


『なんだよ!笑』







僕は

君のことが

世界で一番理解できなかった。


僕らは

まるで極と極にいる。

ほとんど共通点がない。

きっとたぶん

これは今も。


だからせめて言葉を聞かせてほしいと言っても

君は自分の気持ちを言葉にするのを難しがっては

いつも黙ってこっちを見てばかりで


それがどうにも僕には苦しかった。

酸素が薄くなりそうなくらいに。


だけど

しぶといくらいに諦めの悪い君を見ながら


君から見ても僕は遠くて

どうしたらいいか分からないはずなのに

なぜこんなにも必死を極めるのだろうと


僕は僕の苦しみさえ超えて

ほとほと疑問に思うようになったんだ。




理解できない領域が大きいほど

相手と向き合うのは苦しい。

時に激しく傷ついて

張り裂けそうなほどに痛い。


君も同じはずだろう。って。


僕はこんなに嫌なのに

君はどうして嫌じゃないんだって。。







『なおきさん

できなかったことができるようになって

今のところ続いてるんです』


『へえ?。。

どうやってそこまでいったんだ?』


『実は

何度もやり方を変えてみていたんです

今回のやり方は

自分に合ってるかもしれないです

すごい時間がかかっちゃいましたけど。。

今度こそうまくいくように頑張ります。。』




知らなかった。


君がそんなにも

僕に近づく努力をしていたなんて。


そんなにも遠いところから

こんなにも遠いところへ

少しでも近づこうとしていたことを

初めて知った。




変わりたくて

変われなくて

泣いてばかりの君を見てきた

僕はそう思っていた。


でも

「変われないけどすがっていた」のではなくて

「努力中だから諦めるわけにはいかなかった」んだね。




僕の方が言葉を失った。




僕らは

極と極にいる。


驚くほどに共通点がなく

僕が笑っているそばで君は困った顔をして

君が困惑しているときに僕は笑ってる。

全くかみ合わない。


呆れるのを通り越して

疲れ切って言葉をかける気力すら失ったことも

何度もあった。




でも


確かに君は必死だった。


それだけは伝わっていた。






振動。


22時の君。


君の最後の言葉の先で


共感できなくても

共有してみようかなと思えた。


これからは

君の

黙る理由を知ってみようかなって


君の中で起こっている

水面下での変化を

水面に浮かび上がってくるまで待ってみようかなって


思えたんだ。


僕も

君という遠すぎる極を

目を凝らして見つめてみようかなって。


驚いた。

これは

君が僕にまでもたらせた革命だ。







電話を切った後

誰かが言った言葉を思い出した。




『愛は


待つことだよ』




そうか。


愛することは


関心を持って


待つことなのか。




待てるかな。


少しの不安がよぎる。


でも今は

待ったその先を知りたい。




『遠いのにわざわざこっちに来ようとしなくていいだろ

君は君でいいと思うよ』


いつか君に言った言葉


今は

ただ記憶にしまっておいてある。




Naoki.