• Naoki.

奇跡が起こった26分間。

『今日じゃなきゃダメだと思うの』


会いに来たがる君の言葉を

何度も拒む僕を黙らせた

昨日

電話で交わした最後の君の言葉。


あんなに拒んだのに

君が来るとなったら

何度も時計を見て

落ち着かなくて

今どこにいるんだろうって

気になりだした。。




君と出会って

もう

3つ目の季節がやってきた。


落ち着かない世の中の

雑踏の中で君が僕を見つけた

あの日から

壮絶な僕らの戦いのような日々が始まったんだっけね。


僕が逃げて

君が追いかけて

僕が振り向いて

君が引っ張って

僕が嫌がって

君は泣いて


激しくて

しんどくて

眩暈がする毎日で

自分の感情に

自分がついていけない

そんな毎日だったよ。


君はどうだった?



『あなたじゃなきゃダメだって全細胞が言ってるのよ!』


『そんなの知らないよ!俺は嫌なんだよ!』



繰り返して

嫌気がさして

蕁麻疹が出そうなほど

何度も。。


嫌で嫌で仕方がなくて

扉を閉ざして鍵をかけた日もあったね。


だって

君は

君のエゴを押し付けてきて

心を重ねたい僕には

到底理解できないような『好き』で

何度も刺してくるから

痛くて

たまんなくて

もう本当に嫌だったんだ。。



『好きなの!』


『一人で好きなんじゃん!俺は好き合いたいんだって!』


『じゃあ好きになってよ!』


『!?。。

そう言う君のどこを好きになればいい!?』


嫌だって

何度も君に投げ返した。


そして

ずっと

同じ繰り返しをしているものと思っていた。

絶対に交わらない平行線だと思っていたんだ。

でも

投げ返すたびに

それをちゃんと受け取っていた君だったのかな。




時計は約束の時間になって

賑やかな夜の街の喧騒が一瞬耳から消えた。

改札の奥に

走ってくる君を見つけたからだ。


僕の胸に飛び込んできた君

細い腕を回して僕を抱きしめようとするのが伝わって

だから

強く抱きしめ返した。


僕らに許された26分間。


カウントダウン

聞こえそうなほどに打つ鼓動

雑踏の中君の手をひいて

君に見せたい夜景まで

ほとんど君の顔を見ずに歩いた。


きっと

予感していたのかな

「今日」が「昨日」までとは

違ってしまうことを。




開けた非常階段の扉

真っ暗な階段

駆け上がる僕の後ろに

君の足音

最後の一段

飛び上がって

目の前に広がった一面の夜景

肩を上げて息を吸い込む君の顔を

やっと

正面から見た。




重なる温度の分だけ

心が重なっていたかった僕だけど

『君のエゴを受け入れるよ』って言って

重ならない心の痛みさえ受け入れる覚悟で

君と向かい合うことにしたあの夜から

君の心が

音をたてて動き出した気がする

今までとは違う方向に。

何度も泣いて

『ありがとう』って言うようになったよね。


それで

昨日

あの夜景を横に

君を見つめていて

分かった気がした。


そうか

君は

ここに来たかったんだ。

愛し合える心を持って

僕の目の前に立ちたかったんだ。


君は

君を

諦めなかったんだね。。

僕にすがっているようで

自分にすがっていたんだね。。

そうか

だから

僕も

君を愛したんだ。。


激しくても

痛くても

拒否反応に苦しんでも

それは全部

君が君自身に感じていた痛みで

僕はそれを一緒に感じていたんだね。。


それでも

この場所でこうして

向かい合って見つめ合っているということは

僕は

君を

愛してきたんだ。。


そうか。。

よかった。。



黙って僕を見つめていた君は

もう一度

慣れない手つきで

僕を抱きしめた。


『抱きしめに来たの。

昨日辛そうだったから。

今日じゃなきゃダメだと思ったの。

明日や明後日になったら

また違っちゃうでしょ?。。』


驚いた。。


君が初めて口にした

本物の愛だった。



こっちが泣きそうだった。




『今何分?』


『あ

21分。。』


『ヤバいヤバい終電!』



迫りくるヘッドライトの波に逆らって走った僕ら

奇跡が起こった26分間

最後の瞬間まで高鳴っていた鼓動

確かに変わってしまったドラマ


ありがとう


やっとたどり着いた


愛だ―――。



Naoki.