• Naoki.

夜、君を思うのに、花が咲く。



差した傘の屋根で鳴る音が随分大きくて

今夜少し切なかった感情が

闇に果てしなく広がった。




ちょうど

夜を描こうとしていたところで

どんな絵になるかと思っていたんだけど


「これは雨だな」


そう思った。




一つとして同じ夜はないとして

でも

君の声を聞きたいと思う夜は何度も来る。



目の前に流れる運河が

街灯に照らされて

そのうねりを見せる

その様を見ながら

心がつられるように

音をたてた。



ああ

そうだよな

こういう切ない感情って

あったんだったな。







戻って

雨を描き始めた。


その時までは

随分繊細な絵になるかと思ったんだけど


描いていくうちに


まるで

上から注がれた水が

下で大輪の花を咲かせて

そしてまた上へ向かって

咲き誇る歓びを放っていく

そんな絵になった。


少し

苦しいぐらいの切なさと

大粒の雨が降る

こんな夜なのにね。







もう

悲しい絵は描けないのかもしれない。


そう思った。




切なさに浸れない。


悲しみがとどまっていない。




切ないほどに

君の声が聞きたかったのに


シチュエーションはバッチリな夜なのに


どういうわけか

今夜の最後

絵を描き上げて

微笑む僕がいた。



Naoki.