• Naoki.

君と過ごす日は、いつも、雨。


『少し散歩でもするか』


部屋を出て

静かな廊下

黙ってついてくる君の

気配を後ろに連れて

エレベーターに乗り込んだ。


エントランスのガラス越し

音もなく降り続ける雨

傘を広げて右横に君を入れたら

静かに歩き出した。


ただ横について歩くから

君の左手を

僕の右腕に引っ掛けたんだ。

すると

君の左手は

ぎゅっと

僕の腕に

君の流れ出たかのような気持ちを伝えた。



あまりに天気が悪くて

空を覆う雲が低すぎて

スカイツリーが

ほとんど雲に入り込んで見えなくなっているのを見て


『ジャックと豆の木の豆の木じゃん?あれ』

と言ったら

君は

笑った。



東京と言うより

江戸と言いたい町。

ところどころに

差し色のように赤紅。

誰もが知る真っ赤な門

シャッターの下りた昼の仲見世通り

歩く僕たちの前にひとっこひとりいなくて

ただ導くかのような雨の中を

静かに歩いた。





雨は

降り続いているままなのに

時間は

空をもっとぐっと暗くして


僕らは

再び

橙の光一つの部屋で

見つめ合った。


吐息が聞こえるほどに近い距離

動いて

伝え合ったり


近すぎて

息の仕方が分からなくなって

逃げるように離れたり


あんまり君が見つめてくるから

どうしようもなく照れたり


そんなとりとめのない時間が

静かにロマンチックで

ほんの少し苦しくて

幻想的に現実的だった。




ねえ

僕は

まだ

君のいる日常に慣れなくて

意識が少し朧げになって

何度も

僕を惑わすんだ。

つまり

ほら

まだ

混乱してしまう。


僕ら

どうしてこうなったんだっけ?。。


君は

あんなにエゴむき出しで

独りよがりだったのに

いつから愛に変わったんだっけ?。。


なんて。。ね。




最後まで雨だったね。


今のところ

僕らが会う日は

いつも

雨だ―――。



Naoki.