• Naoki.

僕は、僕の未完成を喜んだ。

木曜日の午後三時前。

窓から見上げる

うっすら青い空。

本日も晴天なり。



たった今珈琲を入れて

画面越しに君も珈琲を入れた。


同じものを飲んでいる僕らは

全く違う考え方を持つ。


捉え方も

感覚も

感情の動きも

テンポも

使う言葉も

何もかも違いすぎて

理解が止まったり

笑いが止まらなかったりする。



初めて知り合ったときに受けた衝撃。

それはただ通り過ぎていくものと思っていたのに。

まさか

こんなに見つめることになるとは

思ってもいなかったよ。


何度も君の手をはらう僕の裾を

泣きながら掴み続ける君の必死さに

ほとほと困りながらも心が動いて

動き続けて

今日を迎えた。


思えば

僕から相手を好きになったことはなかったけど

でも

こんなにも心を動かされたことも

なかったな――。




たびたび

立ち止まって

君を向いては

君の発した言葉の意味を聞く。


頭の中が違いすぎる僕らだから

君の言葉が伝えたいイメージに

心を傾ける。


そしてまた歩き出すと

君は僕の視線の先を一緒に見ようとする。

同じものを見たがって

同じものを口にしたがって

同じものを欲しがる。


だから僕は

指先で見せて

分けて口に入れて

好きなものを教える。


そして

君がどう感じるのか

そこに興味を持って見るようになった。




ねえ

僕はさ

一つとして同じものがない自然の理と

二度と同じ時はこない一瞬の儚さに

身を投じて

心を傾けて

生きてきてさ?

僕にとっては

これが全てだと思っていたんだよ。

僕の人生の全てだと思ってた。

君に出会うまでは。


だけど

君と出会ったことで

僕の立っていた世界が

激しく音をたてて

まるで空が割れるかのような衝撃が走ったかと思ったら

割れた空から全く違う空が入り込んできた。

宇宙だと思った。


僕の持ち合わせていない

僕とは異なった全てで作られたかのような君と

一つを

一瞬を

共有して

異なるものを伝え合い

互いに感じようとする時間に

君を愛することで

君が僕に流し込んでくれる異なった世界を愛する。


僕は

君によって

僕の未完成を知り

これを喜んだ。



もう

まもなく

春と言えるのかな。


君が感じる次の春の全てに

何度も

幾度となく

触れたいと思う。


一つになれないことが

こんなにも胸を高鳴らせて

こんなにも世界を彩るとは。ね。



Naoki.